「長生きしてごめんね」って言わせない

私は、千葉県香取市で生まれ育ちました。アメリカで公衆衛生の学位を取得後、大好きな4人の両祖父母との最後の数年を過ごすために帰国しました。それは、何にも変え難いかけがえのない時間でした。

一方で、この地での介護と看取りの経験は、公衆衛生を専門にする身として、根底から仕事との向き合い方を変えざるを得ない思いをもたらしました。

世界中の公衆衛生や医療の専門家が長寿を目指している中で、家族の介護の負担を申し訳なく思って「長生きしてごめんね」と言う祖父母。何か間違っていると感じました。

実際、父母はそれぞれの両親と住むために15年以上別居し、母親は20年続けた料理の仕事を辞めました。私自身も仕事を週一回にして、東京から引越し、香取市(母方)と多古町(父方)に住む両祖父母の介護を行いました。祖父母の体調が悪くなってから約15年。たくさんの医療・介護従事者にお世話になりました。

その中で、故郷の香取市が直面する現状を目の当たりにしました。この辺りの療養病院は常に満床で、最後は家族がいれば在宅医療が介護のベースになることが多いです。急性期の病院から退院後、何より心細かったのは、近くに24時間医師が駆けつけられる診療所がないこと。それは、夜中に急変しても、1時間半以上医師が来られなかったり、朝まで不安の中で待たなければならないことを意味します。家族の状況がさらに悪化し、結局救急車を呼んで大きな病院で処置を受けることも何度もありました。4人いる祖父母が具合の悪くなるタイミングが重ならないことを祈りつつ、綱渡りのような毎日でした。

香取市は、江戸時代の風情を残す、本当に美しい街です。しかし、人口に占める65歳以上の割合を表す高齢化率は37%(全国平均は29%)で、中心部も過疎地域に指定されています。街のあちこちに空き家が目立つようになり、これから15年は急速に高齢者が増えていきます。国が在宅医療を推進する中で、ますます厳しい状況になるこの地域が直面する問題を思うと、足がすくみそうになります。

でも、だからこそ、今まで自分が学んできたパブリックヘルス、経験してきたこと、そして自分が持つつながりを総動員して、この課題に立ちむかう解決策を提示するべきなんだという使命を感じるようになりました。まずは在宅医療の拠点を作り、そこでは、介護や看取りの研究と実践の橋渡しをしていきたいと考えています。

この構想は10年近く考えていたのですが、この夏素晴らしい仲間たちに出会い、前に進めることにしました。

まずは、この地で、在宅医療の実践と研究を行う医師を募集しています。超高齢化と過疎化の典型であるこの地で、世界が今後経験する課題の解決策を模索していきます。私たちと一緒にチームの一員になることに興味を持った方は、ぜひこのツアーに参加して、私たちに会いにきてください。応募を待っています。

林 英恵

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林 英恵
公衆衛生学者
Down to Earth
BEYOND HEALTH
共同代表取締役
プロフィールを見る

SAWARA SPECIAL TOUR
FOR MEDICAL DOCTORS

在宅医療に携わりたい医師のための佐原ツアー

  • パブリックヘルス
  • 在宅医療
  • 実践
  • 研究

私たちと一緒に在宅医療の実践をしながら
日本発のエビデンスをつくっていきませんか

2024
2.23
[Fri]
限定30名
締切 2.16 [Fri]
場所:千葉県香取市佐原
  • 予定
  • 13:00-14:30 佐原ツアー
  • 14:30-18:00 セミナー
  • 18:00- 懇親会
  • 費用:参加無料(懇親会のみ実費)
  • お問い合わせ:info@down-to-earth.co
ご応募はこちらから

ツアー&セミナー内容

  • 13:00-14:30
    ツアー
    数々の映画やCMの舞台になっている千葉県香取市佐原。生粋の佐原っ子の林英恵が、地元の人しか知らない佐原の街を案内します。観光とは一味違う佐原を感じてください。もちろん、在宅医療の拠点となる場所もご案内します。
  • 14:30-18:00
    セミナー
    • なぜ今佐原で在宅医療を立ち上げるのか
      Down to Earth BEYOND HEALTH設立の背景「長生きしてごめんね」と言わせない社会を作る(林英恵)
    • パブリックヘルス×在宅医療
      パブリックヘルスの力で在宅医療を前進させる*理論編(林英恵)
    • パブリックヘルスと在宅医療でエビデンスをつくる方法*実践編(長谷川耕平)
    • なぜ佐原がロールモデルになりうるのか—千葉県北東部が抱える医療の現状(吉村健佑&佐藤大介)
    • 佐原が直面する地域医療の現状(仮)(坂本文夫&坂本壮)
    • これからの在宅医—地域医療での経験をキャリアにどう活かしていくか—(田上佑輔)
    • Down to Earth BEYOND HEALTHの体制とこれから(根岸友喜)
  • 18:00-
    懇親会
    チームメンバーとの懇親会
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当日のスピーカーでもある仲間たち

私たちと一緒にやりませんか?

2月23日、みんなで香取市で待っています!

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長谷川 耕平
Kohei Hasegawa, MD,PhD
ハーバード大学医学部教授・救急医
Down to Earth BEYOND HEALTH株式会社 チーフメディカルオフィサー

専門は救急医学、生命情報学、トランスレーショナルリサーチ。使命は日米のアカデミアと産業界に橋をかけ、サイエンスを実用化して一人でも多くの人を救うこと。2023 年 10 月よりハーバード大学医学部教授就任。救急医学分野では唯一の外国人かつ最速の昇進となる。同大学医学部で教鞭をとりながらマサチューセッツ総合病院救急外来で指導医として勤務。アメリカ医学界誌(JAMA)等に 300 本以上の研究論文や教科書を出版。ハーバード大学にて学術界と産業界をつなげるトランスレーショナルリサーチの研究室を設立・主導。救急医学会 (Society for Academic Emergency Medicine)から 2016 年に Young Investigator Award および 2022 年に Mid-career Investigator Award を受賞(ともに日本人として初)。慶應義塾大学総合政策学部、東海大学医学部、ハーバード大学公衆衛生大学院卒。

田上 佑輔
Yusuke Tanoue, MD
医療法人やまと理事長

熊本生まれ。千葉県国保旭中央病院での研修医を経て東京大学医学部附属病院腫瘍外科に入局。東日本大震災でのボランティア活動を機に 2013 年に宮城県登米市と東京にてやまと在宅診療所を創設。診療以外にも地域住民や行政と関わり、2014 年より登米市地域包括ケア推進アドバイザーに任命されている。2017 年に「やまとプロジェクト」を発足。都市と地方を循環する医師の働き方モデルを医師不足、地域医療再生の一つの解決策として提案している。これからの在宅診療・地域医療についての勉強会、講演を行っており、多数のメディアに活動が取り上げられている。2021 年 NHK朝の連続ドラマ小説“おかえりモネ”のモチーフとなる 。また、これからの少子高齢化社会の医療を担う医師の育成を NANIMON プロジェクトとして始め、社会を変える医師の輩出に臨む。東京大学医学部卒。

坂本 壮
So Sakamoto, MD, PhD
地方独立行政法人総合病院 国保旭中央病院 救命救急センター医長

2008年順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属練馬病院救急・集中治療科、西伊豆健育会病院内科を経て、2019年4月より現職。救急外来で研修医とともに奮闘中。救急初期対応などに関して、全国の研修医や看護師に向けて、「あたりまえのことをあたりまえに」をモットーに教育活動を行っている。趣味はミュージカル鑑賞。好きな漫画は「宇宙兄弟」。著書は「救急外来 ただいま診断中!」(中外医学社)など。現在は、香取市にある坂本医院でも診察を行う。

坂本 文夫
Fumio Sakamoto, MD
坂本医院 院長

昭和52年日本医科大学卒業、同年日本医科大学付属病院第3内科入局、昭和62年坂本医院開業。元香取郡市医師会会長として香取市の地域医療を取りまとめる。2023年、地域医療への貢献を認められ、旭日双光章秋の叙勲受章受賞。

吉村 健佑
Kensuke Yoshimura, MD, MPH, PhD
千葉大学病院 次世代医療構想センター長・特任教授

精神科医・産業医として研鑽を積んだのち、厚生労働省に入省。主に診療報酬と医療情報に関連した政策と制度設計に関わる。2018年より千葉大学病院にて病院経営の教育研究を行い、同時に千葉県庁にて地域医療の推進、医師確保に取り組む。現在、千葉大学病院 次世代医療構想センター長・特任教授。 千葉県旭市との共同研究など産官学連携を得意とする。専門は医療政策、精神医学。 精神保健指定医、公衆衛生学修士、医学博士、労働衛生コンサルタント。千葉大学医学部卒、東京大学大学院・千葉大学大学院修了。

佐藤 大介
Daisuke Sato, PhD
藤田医科大学病院管理学・経営学 教授

東京大学医学部附属病院 企画情報運営部/企画経営部 助教、国立保健医療科学院、保健医療経済評価研究センター、千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター 特任准教授を経て現職。病院経営者を対象とした病院経営に関する専門職大学院「藤田医科大学大学院病院経営学・管理学(専門職課程)」の運営に従事。専門分野は医療情報学・病院管理政策学。地域医療構想、医療計画等、費用対効果評価に関する政策研究に従事するほか、大規模データを活用したヘルスケア領域における学術研究を行っている。東京医科歯科大学大学院 医療政策情報学 博士(医学)。

根岸 友喜
Tom Negishi, MBA
Down to Earth株式会社 ビジネスディレクター
Down to Earth BEYOND HEALTH株式会社 共同代表取締役COO

成蹊大学文学部卒業、グロービス経営大学院(MBA)卒業。1999年に株式会社JTB入社後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、株式会社楽天野球団を経て、2013年にパシフィックリーグマーケティング株式会社に入社。2017年より同社代表取締役CEOに就任(現在も在任中)。代表就任後に同社売上を約4倍成長させる(2023年度約60億円)。2019年より経済産業省産業構造審議会臨時委員。使命は社会と人の役に立つこと。

林 英恵
Hana Hayashi, EdM, SM, ScD
パブリックヘルスストラテジスト・公衆衛生学者
Down to Earth 株式会社 代表取締役
Down to Earth BEYOND HEALTH株式会社 共同代表取締役CEO
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 特任准教授

早稲田大学社会科学部卒業、ボストン大学教育大学院修士課程及びハーバード大学公衆衛生大学院修士を経て、ハーバード公衆衛生大学院にて博士号取得 (同学部で博士号取得は日本人女性初)。専門は、行動科学・ヘルスコミュニケーション、および社会疫学。一人でも多くの人が与えられた寿命を幸せに全うできる社会を作ることが使命。外資系広告会社のマッキャンヘルスで戦略プランナーとしてニューヨーク・ロンドン・東京にて勤務。2020年 Down to Earth株式会社を設立。国際機関や政府、自治体、企業などの健康プログラムの戦略開発やブランディング、経営戦略のコンサルティングなどを行なっている。2023年、Down to Earth BEYOND HEALTH株式会社を設立し、公衆衛生と地域医療を研究と実践でつなぐ事業を立ち上げる。著書に『健康になる技術 大全』(ダイヤモンド社)ほか。